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とうふ油

とうふとアイドルについて

ハロプロ研修生のアルバム「①Let's say "Hello!"」

ハロプロ

つんくさんがハロプロのプロデューサーを卒業したそうです。

こんなに熱心に15年近くも老害オタやってて、宗教のようにつんくちゃん曲を信仰していたのに「卒業したそうです」なんてさっぱりした物言いになってしまうことがとても切ない。でも仕方ない、つんくちゃんがプロデューサーを辞めていたことは事後報告として公にされました。
この寂しさと不安ともやもやについてはまたどこかで唸ってしまうかもしれないけど、今回はそのつんくちゃんハロプロのプロデューサーとして最後に手がけた(とおもう)ハロプロ研修生のアルバム「①Let's say "Hello!"」について。

1 Let's say “Hello!”

1 Let's say “Hello!”

このアルバムは完成度が高く、各所で絶賛されているところしか見たことがありません。歴代のハロプロのアルバムと比べても名盤としてででーんと掲げて差し障りない出来ではないでしょうか。確かに予算のなさを伺える部分は多少ありますが*1、そんなことすっ飛ばしても良いものは良い。ハロプロ知りたきゃ一度は聞いてみて。

2014年の11月にハロプロ研修生のコンサート会場限定としてリリースされ、このアルバム欲しさにチケットもないコンサート会場まで行きました。(現在は一般流通してます)
ジャケットには当時のハロプロ研修生の面々がフレッシュに並んでいます。ちなみに黄色く塗りつぶした部分はその後ユニットに加入しデビューした子たちです。(つばきファクトリーはまだメジャーデビューしてないけど)
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こうみただけで、ハロプロ研修生の正規メンへの昇格率の高さに驚きます。どこの芸能プロダクション探してもレッスン生をこれほど正式雇用してるとこないんじゃないかな。アップフロントがお人好し義理人情事務所であることはなんとなく察するけど、それでもこの昇格率!!つまりこのアルバムはユニット入りを前にした実力者たちが集結してるともいえ、初々しさのなかに保障されたハロプロイズムを体現できる女の子たちの確かな歌声が収録されているのです。

女子中学生のめんどくささ

それでこの傑作のアルバム、メロディやリズムの乗り方が秀逸であることを踏まえて、今回は歌詞のことを書きたいとおもいます。
わたしは10年ちかく前まで女子中学生でした。日本人の約半分は女子中学生を経験することになってます。そしてハロプロ研修生においてはなんと全員が女子中学生を経ることになってます。この「①Let's say "Hello!"」はそんな当たり前のような事実をめいっぱい堪能させてくれる歌詞であふれています。女子中学生にしか歌えない細くて弱くて独りよがりな感情がつまってる。

女子中学生を経験したことのある人は少しは共感してもらえると思うんですけど、彼女たちはほんとうにめんどくさいです。好きって素直に正面から言うのダサいっておもってるし、友達と友達が自分の知らないところで内緒で遊んでたりすると嫉妬とショックで貧血起こします。はいはいそういうことねってなんでも分かってるふりして冷静な自分に酔うし、上手くいかないことがあると誰かのせいにして徹底的に攻撃します。
なんかイヤな奴ですね。でも多かれ少なかれこれが実態です。

とにかく女子中学生は身勝手です。簡単に死にたいとか言います。でも消えてなくなりたい、嫌なことから解放されたいっていう気持ちだけで「死にたい」んじゃなくて、自分が死んだことによっていじわるしたあいつらとか理不尽な家族とかに反省してほしい。復讐とか報復とかそういう大げさなやつじゃなくて、死んだあと「自分が悪かった」ってちょっと暗く落ち込んでほしいっていうたったそれだけの感情を相手に期待してわたし死ぬよ?死んだららどうする?って試してみたい気持ちが女子中学生の「死にたい」です。

こんな身勝手で面倒な女子中学生ですが、ときに甘酸っぱく青春の象徴のような扱われ方をします。自分だけが特別だとおもってる女子中学生は、自分のことを特別にキラキラ表現してくれる曲や詩に心を打たれなんだかときめいたりします。
ハロプロの歌詞もだいたいはそうです。でもこの「①Let's say "Hello!"」はその理想のときめき中学生女子をときめきのままで終わらせない、イヤな部分、めんどくさい部分、身勝手な部分、ぜんぶを鮮明にそして曖昧に表現しています。そこがすごい・やばい。

Crying

「何にも怖くない毎日だった  未来のことなんて考えもなかった」
「うちらを中心に世界があった  永遠に終わりなんて来ないと思った」
3曲目に収録されているCryingの一部です。幼馴染との別れを歌ったこの曲で、自分たちがすべてだという女子中学生が勘違いしている万能感を表現しています過去形で。なんでもできるしうちらの関係に終わりはない、でも終わってしまった。走るギターサウンドに乗せて高らかに過去の思い過ごしを歌っています。だから泣ける。

「あいつ私より悲しんでろよ」
別れがつらい、でもわたしよりあいつのほうが悲しいといい。なんという歌詞でしょう。
世の中には別れに「ありがとう」だの「つらい」だの感謝や後悔する歌は無数にありますが、この曲は別れてしまったつらさよりも、あいつも同じだけいや私以上につらければいい!という女子中学生ならではのくだらなく尊いプライドが鮮明にうたわれています。

女の園

「女の園って妬みややっかみと 甘いケーキでできてる」
女の園とはハロプロ研修生(およびハロプロの世界)を指しているのかいないのか。これは極論のような表現で、男のひとが聞いたらなにかの揶揄とでも思うかもしれません。でもある意味でそういう実態があってもおかしくないと女子中学生経験者として思うのです。
歌って踊ってステージに立って注目されたい!入口や出口はその信念だとしてもトンネルの中で自分を突き進めているのは案外やっかみや嫉妬のようなもののような気がするのです。女子中学生の世界は狭いです。誰かよりも、誰かと一緒に、そういう比較の中で生きているのです。

「この瞬間に輝かなけりゃ 女の意味がない」
そう、こういう瞬間があるんです。ここぞというときが。

「恋したい新党」

「救い出してよ退屈はさせないわ」
くだらない日常から脱出したい、もっとキラキラした現実がほしい!友達と比較してうらやましがり、だけど自分じゃなにも行動しない。この他人任せな憧れが痛く突き刺さるのです。いまの自分ってなんかつまんないことは分かってるけど誰かがなんとかしえてくれるといいな~という行動力のない不満。
そしてなんの根拠もなくわたしと付き合えばきっとおもしろいとおもう、退屈させないわとばかりに謎の自信があるのです。この曲は最後に「ねえ、どう?」とだれかに上目線で自分をプレゼンしています。
妙齢の女性が自分の価値を高いものを思い込み男性たちにもったいつけて演出している様子はよく「イタい」「キツい」などと批判されますが、実際は中学生時代からそういう素質があるものです。みんなそう、ワタシの価値を分かってないほうが悪いのだ!



抜粋するとこんなかんじ。実際はストーリーのある曲だったりするので前後の歌詞をあわせるとものすごい窮屈で強がりな世界観が広がっています。
つんくさんはハロプロ研修生に、まだ正規メンバーではない彼女たちに、まだプロではない彼女たちに、まだ普通の中学生の彼女たちにこの歌を歌わせています。ハロプロ研修生はアイドルの卵です。でもただの女子だとおもうのです。わたしが経験したような、日本人の半分が経験するような女子中学生の葛藤と悩みがアイドルを目指しているからといって芽生えないわけがないとおもうのです。いやむしろ同世代と切磋琢磨しているからこそより色濃くどろどろした血が流れているような気さえします。

つんくさんが書く歌詞はメルヘンでときにリアルにときに宇宙的に様々な世界を生み出します。無数に広がる語彙表現のなかでハロプロ研修生にあてがわれた曲たちがこの世界だったというのが、なんともぐっときます。
おじさんがこのやっかいな思考を理解しているというキモさ(褒めてます)がすごいことはもちろんですが、つんくさんはかねてからハロプロのメンバーの生活や人生を大切に生きて欲しいと、アイドルとして活動したその先を見据えて親のように接してきたといいます。愛情の注ぎ方なんてまさにそうでした。そんなつんくさんがハロプロ研修生たちに書き下ろしたこの曲が「キラキラした恋」や「学校楽しい」「友達だいすき」などという単純なことだけじゃなかったことが、そんな浅さを押し付けなかったことが、最後まで*2正面きって接してきたことが伺えて、なんだかそれがいまになって無性に胸を打つのです。
つんくさんは研修生のその未来まできちんと世話役したかったんじゃないかな。*3ハロプロの末端(という言い方は相応しくないかもですが、あえてこう言います)である研修生にまでめいっぱいたぷたぷに染み込んだ愛情をかけてくれていたことにつんくさんのこと信頼するなってほうが無理でしょ。

あまりはっきりと言及されたことはないですが、ハロプロ研修生である彼女たちがこの曲を知って歌うことになにか意義を見出してくれていたら最高だなと思います。共感できるところいっぱいあるとおもう。

ちなみに、「①Let's say "Hello!"」にはお得意の地球ありがとう、毎日サイコー、乙女のくにゅくにゅ系の宇宙的な曲もばっちり収録されていますのでご安心ください。あとこんなめんどくさい女子中学生の歌詞ばかり取り上げましたが、しっかり明るくポジティブに仕上がっているので暗い気持ちにはなりません!!

*1:アレンジが単調、音が安い

*2:プロデューサーとしての最後の曲ではないと思いますが

*3:もちろん研修生だけじゃなくハロプロ全体に愛をもっていたとおもいます